院友の広場
- H30.03.27
院友の著書紹介「インディアンサマー~普通の人生~」
院友の髙橋 忠好(たかはし・ただよし)氏(85法)がご自身の日常を綴ったブログ日記をこの度出版いたしました。
また、著者の旧友である羽田野 潜(はたの・ひそむ)氏(86法)から書評をいただいたので、こちらで紹介させていただきます。
これからも院友のご活躍に期待しております。
【インディアンサマー ~普通の人生~】
髙橋 忠好(85法)著
新潟日報事業社/平成30年2月刊行/定価:1,000円(税抜)
書評『インディアンサマーを読んで』
羽田野 潜(86法)記
ある日、大学時代の畏友である髙橋君から「本を書いたから是非書評を書いてくれ、との連絡が入りました。私ごときが書評を書くのは、少し荷が重いとは思いつつ、駄文を書かせて頂きました。
まず初めに感じたことは、同君の大変な読書量と幼いころからの早熟な、ある面ではリアリズムな思考についてであった。
読書量については、文中に紹介されている本だけで72冊あった。分野にいたっては政治、経済、宗教、歴史、法律、憲法、時事、教育、映画、芸能、文学、音楽、書評、文化論、国家論、人生論、死生観等々と非常に広範囲に及んでいる。
早熟でリアリズムな思考については、小学校・中学校の時代は、早くも戦争や革命について冷淡な見方をしている。また、そのころ人間存在を限定性のものと断定している所などにも、その傾向がみられるように思った。
しかし就職してからの上司の人となりを記載しているところなどを読むとあながち彼の幼いころからの視点は間違いではなかったようである。
個人的には学生時代かなり親しい間柄であったにもかかわらず、(と私は一方的に思っていたのですが)、私の知らない同時代の彼の行動や思考傾向も知ることもでき、とても興味深かった。ついでに言うと恋愛観なども。同君と学生時代を同じくした方々には、是非お読みいただきたい本であると思います。
教育論にみる人間観察についての部分は同感の部分が多くあった。例えば、「罪を犯さなかったことを誇るな。多分それは偶然である。」などの部分である。人間観・老後観についての「現実の人間は肉体とともに精神も衰えていく。老人はもはや貴重な存在ではなく、本音では社会の厄介者と思われる時代である。その前に死んでしまいたいと思う人もあろうが、そういう判断もいつも間にかできなくなるのが老いである。」など、もはや私たち自身の今日明日の姿についての指摘でもある。
氏は、常に「よく考えろ」と書かれている。考えることを疎かにしてきた、あるいは苦手にしてきたわが身にとっては、非常に耳の痛い指摘である。何か古代ギリシアのソクラテスの指摘のようにも思える。
一方、「ちょっと、違うかなー」と思うところも散見される。例えば「官庁組織のいいところはブラックでないところである」などの部分、自らを「リベラル・ナショナリスト」と位置付け「日本という国を尊重し、生涯にわたって一国民としての責任を背負う覚悟をもっている」としているところなどは、なかなかそういいきれない自分自身がある。
最後に、文中の髙橋君の彼女からの言葉に「あなたは弱い人に優しい」という部分がある。私が彼の友人として扱ってもらえたのも、私が「弱い」人間であることを当時から見抜いていたからだと分かった。まさにその通りである。そういう面では、彼の著者から私自身も自分という存在を再認識することができた。私も平均的なレベルから言えば、読書量の多い方であると自認していますが、読んで損をすることのない、いやむしろ読むべき良書であると思うので、この書を紹介したいと思います。是非、読んでください。